玉能回路

週刊「玉能回路」は毎週水曜日更新です。


人馬一心

  1. 2014/08/06(水) 09:00:00|
  2. 週刊「玉能回路」
  3. | コメント:1
 地下馬道とはこんなに傾斜があるのか、とか、こんなにも歩きにくいコースを馬は走るのか、とか、日ごろ関係者以外立ち入りできない厩舎やバックヤードはかくも広いのか、とか、何もかにもが初体験の福島競馬場は昨日最高気温39度を記録した。

 見に行ったのは競馬ではない。馬術競技の会場である。東北6県から集った精鋭たちが繰り広げる熱い戦い。炎天下にテントが張られ、すぐ目の前に、馬場馬術と障害飛越の競技会場が作られてゆく。応援席は砂地から吹いてくる熱風に負けないくらい熱くなる。何しろ長崎国体の出場権がかかった試合である。

 まだまだ馬初心者の私は聞くもの見るものみな珍しい。競技が始まった途端に、物音ひとつ立てずしんとなる応援席は今まさに指揮者が指揮棒を振り上げる時の、コンサートの緊張感によく似ている。目の前を通る馬の息遣いが想像をはるかに超えるほど大きく響くのにも驚いた。

 感動的な出来事があった。少年の部の二人と二頭だ。炎暑のせいだろう、悲鳴に近いような声を上げて障害を飛ぶ馬を、障害物との距離を測り、歩数をあわせ、コースを正確に回り、なお一刻もはやくゴールへと導く馬上で、彼女の集中力はどれほどのものだろう。あまりの喘ぎに、愛馬は死んでしまうのではないかと、怖かったそうだ。60数秒で10以上の障害を飛ぶ。単純計算なら馬は5秒に一度飛び上がり、前肢をたたみ、バーを越えてすぐに着地の体制を取る。しかもすごいスピードなのだ。乗り手と馬の息も心も合うのは勿論だが、ゆるぎない信頼感が馬からも人からも伝ってくる。人馬一体いや、人馬一心だと手に汗握りながら思った。サンちゃんことライジングサン、堂々の2位である。

 もう一頭は人馬転。まさかの失権になった。一瞬視界から消えたように見えた馬、直後に砂を擦る大きな音と砂煙。パーフェクトで飛び続け、後半のコーナーでの出来事だ。あぁ~という声が応援席に溢れた。馬と少年が立ち上がるまでのほんの数秒をどれほど長く感じただろう。幸い人馬ともに擦り傷で済んだ。少年の悔しさは勿論だが、ドリーことハロードリーも悔しかったに違いない。厩舎に戻り、黙々と馬の脚に湿布薬を塗る彼と、馬との無言の会話を聞いた気がした。

 何かの応援に出かけるなど、久しぶりのことだ。応援に熱くなったのも、娘の部活以来かもしれない。なんという一日だったのだろう。その素晴らしさに感動という言葉以外にみつからず、私は深夜になっても興奮状態だ。清々しさ、温かさ、潔さ、そして愛おしさ、そんなものが心に溢れて、応援に行かせていただいたはずが、こちらが大きな応援をもらったような、不思議な力がふつふつとわいてくるような、ありがとうと言わずにいられない気持ちになっている。

 KILL YOUR TIMID NOTION と書かれた奈良美智の絵を思い出した。

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comment

  1. 2014/08/21(木) 18:13:15 |
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  3. 勘太-モモのママ 
  4. [ 編集 ]
胸が熱くなりました。
有難うございます!

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