玉能回路

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梅しごと

  1. 2014/07/02(水) 09:00:00|
  2. 週刊「玉能回路」
  3. | コメント:1
梅しごと_01 今年も青梅をたくさんいただいた。何時もなら全部梅酒になるところだが、昨年ネットで見つけたジップロック梅干しが殊の外うまくできたことと、満腔の信頼をおく医者である友人から毎朝の梅干番茶を勧められたこともあつて、今年はほんの一袋ではなく本気の数袋をと準備を始めた。

 まずは色づくまでと籠に並べた青梅が、何とも言えないいい香りを漂わせ始めた。わずか数時間で部屋の中は甘酸っぱい梅の香りでいっぱいである。自然の香りとはなんと強烈で、それでいてなんとすっきり消えていくのだろう。何時までも残る芳香剤や香料とはその消え方がまるで違う。

 忙しかった先月。移動距離も出会う人も多かった上に、人間関係の煩雑さや、複雑に交錯する思惑に振り回され、突風の中に放り出されたような気持ちになった。いつまでも消えない後味のわるさは、鼻につくばかりか衣服にまで染みつく芳香剤のようだった。

 それに引き換え、なんとこの梅の香は清(すが)しいのだろう。ふと、台所で機嫌よく梅しごとをしていた仙台の母を思い出した。梅だけではない、らっきょうも、沢庵も手前味噌も柿の渋抜きも、小豆を煮てこしあんを作る時も、それぞれにたまらなくいいにおいを漂わせていた。

 女はみな、こうして四季折々の仕事をしながら、払いようもないほど重くのしかかる何かを浄化させてきたのだろうか。

 梅を洗う。梅の実を傷つけないように丁寧にへたをとる。布巾で水けをふき取りそっと籠に置く。いつのまにか手のひらも甘いあんずのような匂いになる。いつのまにか心を覆っていた黒雲のことをさっぱりと忘れている。

 そういえば母の口から人の悪口を聞いたことがない。突然、母の思い出が蘇る。紫蘇をもんで真っ赤になった指、カラカラと笑う声、首に巻いたネッカチーフ。どのシーンも笑顔だ。母は偉かったんだなぁと思う。私も梅しごとで修業をして、軽やかに笑える女にならなければ。




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comment

  1. 2014/07/02(水) 13:12:09 |
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  3. yukari
  4. [ 編集 ]
私も市販の芳香剤は苦手で、アロマのパワーをいただいています。

私の母も、いろんな「いい匂い」を漂わせていました。
ジャムを作るのに、りんごやいちごをコトコト煮る匂い。
お饅頭の餡を作る小豆を煮る匂い。

煮たり、焼いたり、漬けたり、干したり。
いろんな匂いを思い出します。

ワケあって疎遠になっている母。
週末あたり、電話でもしてみようかな…

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